ゆがけ(弽)について

現代の弓道で使われるゆがけは、硬帽子といって、親指の部分が木が入っているものが主流です。

この硬帽子というのは、江戸時代、三十三間堂の通し矢という競技のために考え出された道具です。

三十三間堂の廊下(約120m)で端から端においた的に中てるというものです。ただ120m先の的に中てるということではなく、廊下には屋根があり、高さは5m程しかありません。つまり、ほぼライナーに矢を飛ばさなければなりません。しかも花形競技の大矢数という競技は24時間で何本中てられるかという過酷なものです。
そのため、戦で使う弓(60~120kg)より弱い弓(25~38kg)で、矢も特別に軽く羽の小さく空気抵抗が少ない専用のものが使われました。
そんな競技の為の工夫で生まれたのが親指部分に木を入れ、薬指も添える四つがけでした。

四つがけはあくまで通し矢競技のためのもので、当時の選手は、的前では柔らか帽子の三つがけを使っていました。

しかし明治維新後は片手間に弓を習う人が増え、使い方の大きく異るゆがけの技術を両方習得するほど練習時間のとれる人は少なくなり、的前(近的)でも硬帽子の四つがけを使う人が増えました。

その傾向は堂射系の流派で顕著で、硬帽子の三つがけというものも生まれました。土日に趣味として弓を引く人にとっては20キロ以下の弱弓でも楽に引ける硬帽子はまたたく間に普及しました。

いつしか柔らか帽子、または帽子なしゆがけは、「弱い弓をひくためのもの」「初心者のためのもの」という誤解が多くの人に広まっていきました。

しかし、本来硬帽子の四つがけは、一日数千射という実戦用の弓と比べると弱いものの、非常に過酷な競技の為に考案されたものです。堂射を目的とする流派以外の人間は全く不要なものであることがわかると思います。

また、親指が木で固められているということは刀を扱えないということを意味し、実戦では全く役に立たないものです。

武術としての弓は、親指部分に木の入っていないゆがけでなければ成り立たないということがおわかりいただけると思います。
数百射程度なら、どんなに強い弓(人間の扱える範囲で)でも何の問題もなく引くことができます。

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